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よく噛める総義歯の基本は総義歯の型取りと噛み合わせの高さの決定にあると確信して当院は総義歯の診療に当たっております。今回は特によく噛める総義歯の要である当院での総義歯の型取りについて説明します。

A)スナップ印象

スナップ印象の目的は自然な患者固有の口腔形態を採得し、特に安静時の口唇と頬粘膜の折り返し位置、口腔底の高さ、パッドの形態をありのままに採得する事です。

a)準備するもの

1)フレームカットバックトレー

2)テルモシリンジ50ml

3)アルフレックスダストフリー(混水比:下顎1:1.5,上顎1:1.2)

4)アルフレックスデンチャー(混水比:1:1)

 

b)採得方法

1)フレームカットバックトレーを試適し、口唇部のハンドル保持位置を確認します。

2)上記混水比で流動性を高くしたアルフレックスダストフリーをシリンジに填入し、レトロモラーパッドから頬棚部から口腔前庭から反対側のパッドへと唇頬側を印象材で満たした後、舌側も同様に、顎舌骨筋から舌下ヒダ部からレトラモラーパッドへと注入します。

3)アルフレックスデンチャーをフレームカットバックトレーに盛り付け、口腔内の試適した位置に挿入します。この時印象材のフローがある程度落ち着くまで5から7秒の間口腔内で保持します。

4)患者に閉口安静位をとらせ、口唇を閉鎖してハンドルを把持してもらいます。

5)最後に、下顎下縁部から頬骨弓方向に頬部を2から3回撫で上げ、印象材が硬化するまで待ちます。

c)石膏模型の製作

撤去した印象材に、レトラポラーパッド、唇頬側の粘膜の折り返し部分、舌下ヒダ部、顎舌骨筋窩部が採得されている事を確認します。この時多少の気泡や印象材の薄い部分があっても、出来るだけ変形が少なくなるよう石膏模型を製作します。各個トレーの変形になりますが、試適時に調整が可能です。

B)各個トレーの設計線の表記と製作

採得した印象体、または、石膏模型上に各個トレーの設計線を以下の手順で表記します。

1)レトラーモラーパッドは、全周を表記します。閉口安静時のレトラモラーパッドは横長の形態になっています。

2)染谷のスジを避けます。レトラモラーパッド部の頬粘膜を外側に引っ張ると目視出来る場合があります。

3)頬粘膜の折り返し部よりも、2から3mm内側に表記し、頬小帯を避けます。

4)オトガイ筋の付着部は上部三分の一のみを覆うようにし、下顎小帯を避け、なだらかな曲線になるように結びます。

5)舌側は、ガイドラインとして最突出部である顎舌骨筋相当部を描出し、パッドの舌側二分の一のところへ表記します。設計線は、そのガイドラインの2から3mm後方から平行な線で、前方部のS字状カーブの変曲点まで表記します。

6)舌下ヒダ部から正中部は、上記の変曲点から最大豊隆部を通り、舌小帯部が口腔底部に相当する場合は、2mm程度口腔底より上に表記します。各個トレーは、透明のトレーレジンを用いて設計線の通りになるよう製作します。トレーには閉口印象の為の咬合堤を基準ロウ堤と同じ寸法で付着します。印象採得の前に、ロウ堤部は各個トレーが安定して咬合するように調整し、咬合高径は閉口安静位と同じ程度でやや高めの高径に設定します。

 

 

C)精密印象

前述のようにフレームカットバックトレーによるスナップ印象から得られた各個トレーは、印象体の外形よりも、やや小さく作製されています。このままでは粘膜の折り返しや口腔底には到達していないことになります。精密印象の目的は、この短めの各個トレーに機能的な辺縁形態をつけ加え、義歯の床下粘膜面と辺縁形態を決定する事です。また精密印象を行う際には、咬合した状態から6つの機能運動を行う事で辺縁形態を採得します。これらの機能運動は先人たちが必要十分な機能を集約して考えられたものです。このように、最終的に義歯の辺縁を決めているのは、患者自身の機能運動である為、吸着義歯の形態は、患者自身が決定していると言えます。印象採得のシークエンスは、いずれのステップも一定のルールに従って行われます。

1)準備するもの

a)シリコン印象材

b)アドヒーシブ

c)ディスペンサー

2)精密印象の方法

a)一次印象

各個トレーの辺縁にアドヒーシブを塗布した後、シリコン印象材であるジーニーのヘビーボディーを青のノズルで盛り付けます。口腔内に復位した後に、咬合してもらい6つの機能運動をして硬化を待ちます。硬化した印象体を取り出し、トレー内面に入り込んだ印象材を切り取り、ボーダーのみの状態にします。またパッド部を押しつぶしていないかを確認し、必要に応じてトレーの内面を削除します。

b)二次印象

トレー内面に再度アドヒーシブを塗布し、ジーニーのレギュラーボディーを盛り付けます。再度口腔内に復位して一次印象と同じように6つの機能運動を行ってもらいます。この時印象材を誤嚥させないように注意します。硬化すると印象は完了です。より吸着を確実にする為に印象体の辺縁形態とともに研磨面形態も完成義歯に反映する必要があります。

 

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